今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第32話 創業期から孫社長、三木谷社長、藤田社長がマスコミを味方にできた理由
ソフトバンク・孫社長、楽天・三木谷社長、サイバーエージェント・藤田社長。言うまでもなく、マスコミに連日登場するカリスマ経営者です。では、カリスマ経営者はいつからマスコミに登場しはじめたのでしょうか。
実は創業からそれほど日が経っていない当時から、有名経済メディアに登場しているのです。
では、もうひとつ質問です。彼らはなぜ創業期から有名経済メディアに登場できたのでしょうか。
当時はもちろん大企業であありません。上場もしていません。膨大な広告宣伝費をかけられたわけでもありません。では、ビジネスモデルが画期的だったり、他の追随を許さないような技術があったのでしょうか?
初期のソフトバンクの中心事業は、パソコンソフトの卸売業でした。卸売業は決して珍しい業態ではありません。楽天にしても、先行するネット販売事業者は複数ありました。サイバーエージェントに至っては、ネット広告代理店。当時から極めて多くの同業他社がいる業界です。まだ、アメブロやabemaTVのような、特徴的なサービスは全く持っていませんでした。
しかも、孫社長、三木谷社長、藤田社長たちは創業期から有名経済メディアに出ることを、極めて意識的に、事業の好循環に直結させた経営者でもあります。有名経済メディアに出ることで、社会における存在感を高める。そのことが集客や人材獲得につながる。その成果をまたメディア向けにアピールすることで、新たな好循環を産み続けているのです。
では、この好循環は偶然なのでしょうか。決して偶然ではなく必然だと、私は断言できます。
10年近くにわたり、私はテレビ東京で、どの企業を取材し、いかに伝えるかを考え、決める決める立場にありました。マスコミに出たい企業から、直接、売り込みを受ける立場でもあります。
こうした好循環を生み出した企業が、どのようなメッセージを、どう発しているか。そして、取材者である自分自身が、彼らのメッセージの、どの部分に感応して、取材しようと思ったのか。その思考と感情の動きを探るべく、徹底的に自分の頭の中に向き合い、考え抜きました。
自分自身だけではなく、他局や他の新聞がどう伝えているかも、併せて、徹底的に分析しました。狭い業界ですので、他の有名経済メディアの取材者に同業者として、直接、酒など飲みながら、本音の話を聞くことも頻繁でした。
こうした思索の末、好循環を生み出す企業には特定のパターンがあることを見出したのです。この好循環は自ら、意図的に起こすことが可能です。しかも広告宣伝費は1円もかかりません。
インターネットが当たり前になった、現代。誰でも、実に簡単に情報発信ができるようになりました。自社サイトを持っているのは当たり前ですし、プレスリリースも簡単に出せるようにありました。
ですが、簡単に出せるのはあなただけではありません。誰でも簡単に出せるので、競争相手の数も飛躍的に増えていることになります。単に情報発信したことだけに満足していては、メールフォルダに溜まった迷惑メールの発信者と大差はありません。有名経済メディアにはプレスリリースだけで、1日500通は舞い込んできます。
誰でも情報発信できる時代になっただけに、その発信には適切な戦略性がないと、一瞬で埋没して終わりということなのです。
あなたは単にプレスリリースを出しただけで、満足してはいませんか?