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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第11話 衰退業界で飛び交う言葉の特徴

「シモヤさん、よくお越しくださいました」

今月は2件のパーティーにお招きいただきました。その2件のパーティーで、気になる出来事がありました。

「業界のために、これからも頑張って参ります」

2件のパーティでの主催者のご挨拶で、全く同じ、このセリフを耳にしたからです。「業界のために」という言葉が自然と出てくる業界は、極めて特徴的です。

2つのパーティーのうち、ひとつは伝統的なメディアを対象とした広告業、もうひとつは出版関係の方のパーティーでした。いずれの業界も、市場自体は右肩下がりとなっています。「業界のために」という言葉が自然と出てくるのは、衰退産業の特徴だと、耳にした瞬間に気がついたのです。

私はIT関連やベンチャー企業関連のイベントにお招き頂くこともよくありますが、「業界のために」という言葉を聞いたことは、今まで一度たりともありません。むしろ「業界をぶっ壊す」くらいの、威勢の良いセリフがあちこちで飛び交っています。

誤解のないように申し上げておきますと、いずれのパーティーの主催者も業界では自他共に認める第一人者であると同時に、異端児でもあります。なので、業界の常識に埋没するような方々では、決してありません。そして、順調すぎるほどに、成長を遂げています。(私は違いますが)業界関係者が主な招待客だったので、リップサービスとして、仰られたのだと思います。

が、「業界のために」というセリフが、「リップサービス」であっても、自然と受け入れられる業界そのものは、かなり危険です。「業界」の内部の人間が、群れて、内輪の価値観に固まっていることの証だからです。自分を育ててくれた企業や諸先輩に感謝することと、「業界」を守ることは全く別の話です。

「業界」がなくなろうが、一般の消費者にはどうでも良い話です。「業界」がなくなろうが、自社が生き延び、新たな形で生き延びていれば良い話です。

スティーブ・ジョブズ氏、松下幸之助氏、本田宗一郎氏、井深大氏といった、偉大な経営者がいます。名経営者の創業ストーリーのなかで、「業界を守るために」戦った人物はひとりもいません。内を固めつつ、常に目線は外を向いているのです。

あなたは知らないうちに、内輪の論理に取り込まれていませんか?

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