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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第13話 身内に裏切られる経営者の共通点

「シモヤさん、どの経営者も全く自覚していない。みんな、面白いほどに、自分にいい方に勘違いするんですよ」

最近では「○○砲」などと呼ばれることもある週刊誌のデスクと飲んだときのこと。まだ公になっていない不祥事を探るとき、週刊誌が経営者の取材に行くと、かなり警戒されるのではないか。そう思い尋ねたところ、週刊誌デスクが返した答えが冒頭のセリフでした。

週刊誌が最初に取材に訪れたとき、経営者は「まずい、バレたか」と警戒するどころか、「うちをいい形で紹介するために取材に来てくれた」と、見事に勘違いするのだと言います。こうした週刊誌記事のほとんどは、誰かを非難するものです。ですが、ごくわずかに肯定的な内容の記事も、確かに存在します。そこに掲載されると、勝手に思い込むのだと言うのです。経営者の楽観的な反応は「不祥事を取り繕うための演技ではない」と、デスクは断言します。20年以上、週刊誌取材の修羅場に身を置いてきたデスクの言葉だけに、「決して演技ではない」という言葉には重みがあります。

以前の本コラムに書いたように、経営者が自社の姿を客観的に見ることが、実は極めて難しいことをよく示している話です。それに加え、今回のコラムでは「従業員の気持ちを掴む」という視点で書いてみます。

企業であれ、芸能人や政治家の不倫であれ、発覚の理由の98%は身内からの告発です。それも、極めて近い関係の身内です。絶対に裏切ることはないだろうと信じているような人物です。そういう立場の人がマスコミ、あるいは役所に通報することで、不祥事は発覚するのです。役所やマスコミの地道な調査によって判明するという例は、実は極めて少ないのです。

不祥事が発覚すると、不祥事を起こした当事者は当然、社会的に極めて大きなダメージを受けます。再起不能になることも珍しくはありません。同時に、告発者自身もかなりの返り血を浴びます。従業員や政治家の秘書であれば、失職や給与の大幅ダウンもありえます。配偶者であれば、家計は相当に厳しくなるでしょうし、近所や知人からの好奇の目にも晒されます。自分にも少なからず危害が及ぶことをわかったうえで、告発しているのです。つまり告発の動機は、ほとんどの場合、損得ではないということです。

「不祥事」というと、何か犯罪行為を犯すような、自社とは関係のない、大げさなものに聞こえるかもしれません。けれど、現代の情報社会においては「プチ不祥事」はすぐに露となり、一瞬で日本中に拡散されてしまいます。マスコミや行政が取り上げるほどの案件でなくとも、ネットを使えば、匿名の告発はいくらでもできるようになっているからです。

法令を派手に犯す、あるいは消費者を根本的に騙すことは、もちろん許されることではありません。ですが、完全無欠に、一片の曇りなく、潔白な企業や人間というのも、存在しません。車が一台も通っていない交差点で赤信号のなか歩いてしまう。運転中に制限速度を1、2キロだけ超えてしまった。羽目を外して、つい品のない店に行ってしまう。誰にでも心当たりがあるような、些細な出来事が「不祥事化」するかどうか。それは従業員やごく身近な人の心を、ちゃんとつかめているかどうかにかかっているのです。そして、それは待遇という損得を諭すだけで、解決できるものではありません。

心を掴むためには、経営者の個人的な魅力に頼るという方法もあります。「カリスマ」と称されるような方々です。ですが、そのような特性を持つ人物は、極めて稀です。あるいは、カリスマが退任すれば、すべて終わってしまいます。個人の特性に頼るのではなく、仕組みとして、心を掴み続ける構造が必要なのです。例えば、事業ストーリーを活用すれば、「カリスマ性」のような漠然としたものに頼らずとも、仕組みとして従業員の心を掴むことができます。

あなたは損得を超えた、従業員や周囲の人々の心を掴み続ける仕組みを用意していますか?

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