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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第28話 回顧2017年:顕在化した可能性と危険性

2017年最後のコラムとなりました。テレビ、新聞、雑誌では、2017年を振り返る特集が増えてくる時期です。

2017年は、どういう1年だったのか。

「情報の伝え方の重要性が、かつてないほど高まってきた1年」だと断言できます。最もわかりやすい例は、小池都知事の歴史的勝利と大惨敗です。全く対照的な結果が、短期間のうちに起こったわけです。これが意味するところは何か。

政治家が売っている「商品」が、政策だと仮定します。都議選でも衆院選でも、商品自体はほとんど変わっていません。変わって見えたのは党名や党首の振る舞い方です。政策を「商品」とするなら、党名は「パッケージ」であり、振る舞いは「店主の態度」です。

現代はテレビ、新聞、雑誌に加え、ネットが爆発的に普及している時代です。溢れる情報に囲まれ、どうやって情報が信頼できるかどうか、有権者(=消費者)は判断するのか。前回のコラムでも書いた通り、個別の情報判断にかける時間や意識は、急激に減っているにも関わらず、です。

有権者(=消費者)が無自覚のうちに編み出した、短時間で簡単に情報の信頼性を判断するための方法。それが「伝え方を見て判断する」ということです。「パッケージ」や「店主の振る舞い」が信頼に足るものであれば、「商品」も間違いないだろうという、判断方法です。

これは溢れんばかりの情報に囲まれた消費者の行動として、実に合理的です。

では「伝え方に気をつけるだけで、問題は解決する」のか。そう単純ではないのが、超・情報化社会のやっかいなところでもあります。目の肥えた情報の消費者たちは、プロのあざとい企みを簡単に見破り、露骨に嫌悪感を示すからです。そのあざとさはネットに乗って、瞬く間に拡散します。「巧まざる巧みさ」は必要なのです。

2017年を振り返ってもうひとつ言えるのは、「成長志向の人々と、一般社会の意識のズレが、広がった1年」だったということです。

「ワークライフ・バランス」、「働き方改革」という言葉が、この1年で定着しました。

少子化による労働力人口の激減を考えれば、「働き方改革」による生産性向上は喫緊の課題です。労働力人口の減少を補うためには、多様な働き方が可能となることで、これまで働きたくても働けなかった人々を、労働力市場に呼び込むことも欠かせません。社会として、必要な要素であるのは、間違いありません。

が、「ワークライフ・バランス」という発想は、成長志向の人々とは真逆の考え方でもあります。

スポーツで例えるなら、イチロー選手や貴乃花関が公私のバランスを取りながら、練習に取り組んだでしょうか。バランス重視の時間の使い方で、一流に上り詰めた選手が果たしているのか、ということです。

スポーツで例えましたが、これを企業に置き換えるなら、成長志向でがむしゃらに働こうとする経営者の価値観やそこから生み出される言葉が、「ワークライフ・バランス」重視の従業員や社会全体に、ますます届きにくくなっているということです。

古くは二宮尊徳、高度成長期の本田宗一郎氏が賞賛された時代の価値観とは、社会の価値観が変化しているのです。

2代目、3代目経営者であれば、先代とは異なる情報発信のスタンスが必要となっているのです。

さて、2017年を思いつくままに振り返ってみました。2018年を充実したものとするために、私も年末を自分自身を静かに振り返る時間に充てようと思っています。とはいえ、実際には仕事が山積みなので、最後まで慌ただしく過ごすことになるのが確実なのですが。

みなさま、良いお年を!

「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」で500人以上の起業家を描いてきたストーリー構築法“熱狂的ファン”を生み出す実践的7ステップ