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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第27話 「顧客第一主義」が顧客に伝わらない原因

先週、私が提唱している事業ストーリー構築セミナーを東京国際フォーラムで開催しました。決して安くはない参加費、忙しい年末にも関わらず、多くの経営者に参加していただきました。誠にありがとうございます。皆さまの真剣な眼差しに「成果を絶対に出す」、そのことへ身の引き締まる想いでした。

さて、質疑応答の時間に、他の多くの方にも参考になる質問をいただきました。

「当社では顧客第一主義を掲げ、自社サイトやパンフレットでも強調しています。製品にもその自信はあります。が、それほど伝わってはいない。なぜなのでしょうか?」

業界では技術力ときめ細かい対応力で定評があるという、製造業の経営者からのご質問です。

伝わらない理由を簡潔に申し上げれば、前回のコラムでも少し触れましたが、「当たり前すぎる」からです。

政治家の街頭演説やテレビの政見放送を思い出してください。自分の支持政党であれ、どこであれ、ほとんど印象に残っていないでしょう? あるいは学生時代の校長先生の訓示、結婚式や何かの式典の挨拶も同様です。

「平和が大切」、「おカネは大事」、「環境を守ろう」、「健康に気をつけよう」など。どれも至極当然のことです。聞くまでもないほどに、当たり前。

スマホ、パソコンと情報機器が身近になり、マスメディアに加えて、メールやSNSも日常に溶け込んでいる。現代社会は情報があふれています。海外のシンクタンクの調査では、この10年で流通する情報量は400倍にも増えているのだとか。一方、人間も生物です。人が処理できる情報量は、ほとんど変わりません。結果、どうなるか。

「聞くまでもない情報」は聞き流すことで、人は処理にかかる負担を減らそうとするのです。それでなくとも印象に残らない「言うまでもないこと」が、ますます耳に残らない社会になっている。

では印象に残るために突飛なことを言えば良いのかと言うと、そうもいきません。「顧客より、自分の年収が大事」などという会社はありませんし、そもそも誰の支持も得られません。変わった風貌で選挙に出続ける候補者が目立って有名にはなるものの、「キワモノ扱い」されて、票を得られないようなものです。

つまり、伝達に必要とされるテクニックがますます高度化しているということなのです。ありのままを、ありのままに伝える。そのような牧歌的な時代はとっくに終わったということです。

テクノロジーの世界で起きていることと同じなのです。10年前には最先端のスーパーコンピュータでしか処理できなかったものが、現代ではそれほど大したことではなくなっている。これと同様のことが、コミュニケーションの世界でも起きていると言うことなのです。

もう少し、この問題に踏み込みます。そもそも「当たり前のことを当たり前に言う」というのは、表現に対して、必死で取り組んでいないから起きるのです。

普通の努力を100とします。100の努力で到達する製品品質は80点くらい。90点にするには、もう100の努力が必要となる。95点にはさらに100の労力が、100点にするにはさらに100の労力をかけなくてはならない。80点に必要なのは100の労力。100点に必要なのは400。20点の差を埋めるのに、80点に達するまでに必要な労力の3倍かかる。実際はこんなものじゃ済まないですが、わかりやすく描いてみました。

ジャンルを問わず、一流と呼ばれる会社や人物は、この20点を埋めるための3倍以上の労力を、惜しげも無く投入している。つくることだけではなく、伝えることにも、同じ姿勢が必要なのです。

経済評論家で、ベストセラーを次々と生み出した勝間和代氏は著書のなかで、「書くことの5倍、売る努力をする」と述べています。勝間氏には当時の出版界が書くことばかりに目がいき、売ることへの意識が足りないように見えたのだそうです。

あなたはつくることと同じくらいか、それ以上に売る努力をできていますか?

「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」で500人以上の起業家を描いてきたストーリー構築法“熱狂的ファン”を生み出す実践的7ステップ