今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第48話 地方の製造業は、隠れたお宝の宝庫
自社が対外的にアピールできる「お宝」があることに、最も気が付いていない業種があります。それが、製造業です。特に、地方の製造業はほとんどが全く気づいていません。
自社の技術力には、ものすごく自負がある。にもかかわらず、経営者の方は必ず、このように言います。
「うちなんて、何もないですからねぇ」
けれど、私、シモヤが話を深く伺っていくと、出るわ出るわ。アピール素材の、まさに宝庫なのです。無自覚な企業で、最も多いのは法人向け製品をつくっている製造業です。
では、なぜ自社の眠れるお宝に気がつかないのか。最大の理由は、あまりに技術的に専門性の高い世界にこもっているため、一般の視点を見失っているということです。
自社や、自分の業界では極めて当たり前のこと。にも関わらず、一般の方から見たら、とんでもなくすごい。あるいは、新鮮な驚きを与えてくれる。そんなギャップが、実に大きいのです。
消費者と直接接点のある業種であれば、そうしたギャップに気がつく機会は、嫌が応にも出てきます。ですが、法人向け製品をつくっている業種だと、一般の方と接する機会はほとんどありません。
こうした大きなギャップを抱えているのは、製造業のなかでも、特に地方に拠点を置く会社です。地元では、かなりの有力企業であることがほとんどです。業種としても、立場としても、一般の方の「本音」と接する機会は、なかなかないはずです。
「眠れるお宝」を自覚していないので、当然、自ら情報を発することもできません。ウェブの専門業社に結構な費用を払い、見た目はキレイなホームページを作っていたりします。けれど、ホームページに掲載されている情報といえば、「顧客第一主義」といったように、誰でも言える、何の印象も残らないものです。
本人は何かを語ったつもりでいる。けれど、誰の印象にも残らない。そして、ホームページという器だけは妙にキレイにできている。それゆえ、本人は何かを達成したような気になってしまう・・・。
こんな勿体無いケースが、実に多いのです。しかも、綺麗な器に盛り込むべき料理の素材は、身の回りに溢れているにも関わらず、です。当事者だけが気がつかず、素材を放置したままなのです。
元来、「ものづくり」というのは、日本では最も好感を抱いてもらえるジャンルです。それは一般消費者はもちろんのこと、マスコミも同じです。それは「プロジェクトX」など、かつての国民的人気番組の例を挙げるまでもなく、明らかでしょう。
眠れる素材が、足元にある。それを受け入れてくれる土壌もある。にも関わらず、当事者だけが何も行動を起こさない。
対照的に都心に拠点を置く大手メーカーは、毎年コンスタントに広告費を投じ、自社のブランドイメージ形成に勤しんでいる。仮に大したものがなかったとしても、イメージ先行であろうとも、積極的に訴求していきます。
地方の製造業にとって、本当にもったいない状態が続いていくのです。
もったいない状態を抜け出すには、当事者がほんの少しだけ行動すれば済む話なのです。素材はすでに足元に落ちているので。
「うちにはアピールできるようなものは何もない」
そう思っている地方の製造業の方、ぜひ、最初の一歩を踏み出してください。