今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第47話 SNSを居酒屋代わりに使う、愚
「シモヤさん、中小企業支援の専門家として、ぜひ出演して頂きたいのですが・・・」
先週、「ビートたけしのTVタックル」の製作者から、連絡をもらいました。私、シモヤは収録日のスケジュール、その他諸々の事情から出演できなかったため、他のコンサルタントをご紹介しました。
さて、経営者が、いわゆるバラエティ番組に出演することがあります。ですが、自社のブランド価値や本業への影響を考えると、「出ても構わない経営者」と「絶対に出るべきではない経営者」のふたつに分かれます。理由は割愛しますが、圧倒的多数の経営者が後者です。
バラエティ番組への出演に限らず、自社の経営者自身の情報を発進する際、「何のために」という目的が明確でなければ、極めて危険な事態に陥ってしまいます。
ものすごく単純化した例を挙げます。
例えば、「地域のために奮闘する、若きカリスマ経営者」というイメージを訴求したい経営者がいたとします。けれど、番組のトークの流れのなかで、偶然に「茶化された」とします。大爆笑を誘い、結果、番組は高視聴率に。
ですが、経営者にとって、自分が訴求したいイメージにプラスだと言えるでしょうか。しかも、バラエティ番組の司会者は、トークの達人です。テレビのアマチュアである経営者が抗うことは、絶対に不可能です。
「有名なテレビ番組に出ることができた」と、単純に浮かれている場合ではありません。目的があって初めて、それを実現させるための手段があるということを忘れてはいけません。
「目的と手段」の関係は、本稿で書くまでもなく、当たり前すぎることです。ほとんどの経営者も、自分の本業では、嫌というほど理解しています。ですが、情報発信となると、全く理解できていない、あるいは実行できていないのです。
最も分かりやすい例は、FacebookなどのSNSへの投稿です。
「高級商品や高級レストランの自慢」、「有名人との交友自慢」、「どこかのスポーツチームの悪口」、「どうでもいい旅行日記」、あるいは「酔っ払いの独り言」のような投稿。いずれも、SNS上で毎日のように目にするものです。
Facebookで「いいね」がついていても、そのほとんどが取引先や部下といった、営業「いいね」とでもいうべきものです。
読んでいて、まったく面白いものではなりません。面白くないだけならまだしも、自分のイメージを大きく損なうケースすらあります。
こうしたどうでもいい投稿、あるいは逆に自分のイメージを下げてしまう投稿をする人が、本業でもダメな人かというと、決してそうではありません。「本業はバリバリ優秀」という方も珍しくありません。にもかかわらず、こうした行為に及んでしまう。
その理由は、SNSなどの投稿を、スナックや居酒屋のように用いているからです。
「言いたいことを言って、気持ちよくなりたい」
「心のなかにあるものを吐き出して、早く、楽になりたい」
そのためだけに情報発信手段を使っているのです。スナックのママであれば、話を聞いてくれます。それが、スナックのママの仕事だからです。ですが、SNSの聞き手は、おカネをもらっているわけではありません。内心では呆れながらも、手軽に、営業「いいね」をクリックするだけです。そして気づかないのは本人ばかりという状態に陥ります。
このサイクルに陥れば、よほどのことがない限り、自分「だけ」で気がつき、修正するのは困難です。自分の周りには、営業「いいね」ばかり溢れているから、尚更です。
「何でもとにかく、積極的に、発信すればいい」
「ありのまま自分を語れば、みんなが共感してくれる」
そんなにオメデタイ世の中ではありません。
あなたは本業同様に、個々の情報発信でも、目的と手段を意識できていますか?