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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第24話 「上場しても、有名メディアから取材が来ない」理由

「上場したら、何もしなくてもある程度は取材が来ますよねー」

以前、あるパーティーで、東証マザーズに上場直前の人材関連企業の経営者と話したとき、こんな会話がありました。否定しようとも思ったのですが、とにかく固く信じ込んでいる様子。議論する理由もないので、そのまま聞き流していました。

数ヶ月後、無事上場を果たした後、偶然、別の場でお会いしたのですが、こんな一言が。

「有名なメディアからは、全然取材が来ないのですが、どうしてなんでしょう?」

メディアの内情を知っている者からすると、そんなことは当たり前です。上場をきっかけに取材に来るメディアというと、株マニアのための媒体か、業界紙くらい。「ビジネスパーソンなら誰でも知っている」クラスのメディアが、上場「だけ」を理由に取材に来るということは、まずありません。

取材に来ない理由は、極めて単純です。有名メディアの記者は、上場したかどうかなど、全く気にしていないからです。日常的にチェックすらしていません。

もちろん経営陣にとっては、上場は極めて重要な節目であることは言うまでもありません。

が、メディアの人間にとっては、(言葉を選ばず、ストレートに言わせていただくと)完全にどうでもいいことでなのです。

有名メディアで新規上場を気にしている人間は、通称「兜クラブ」と呼ばれる東京証券取引所詰めの記者か、日経証券部の記者くらいです。

が、数少ないこうした部門の記者にしても、メインの業務はマーケット全体の動きを追うこと。つまり、「日経平均」全体を追っているわけです。なので、個別の企業、とりわけ日経平均に組み入れられていない企業の動向を取り上げるという発想には、なりません。万が一なったとしても、持っている「企画枠」は他の担当者に比べると、相当少ない。

つまり、上場「だけ」を理由にして、有名メディアに取り上げられる可能性はほとんどないということなのです。

上場前から有名メディアに取り上げられる。上場後を機に、さらに取り上げられる。そのことをテコにして、その企業の社会的なステータスがグングン上がっていく。そして、メディアに取り上げられた志に共感して、有料顧客や優秀な従業員が自ずとドンドン集まってくる。

こうしたプラスの循環は、新規に上場したかどうかとは、全く異なるトリガーで動いているということです。あの厳しい上場承認基準とは、何の相関性もないことなのです。社会に広く自分たちの取り組みをわかってもらうには、上場とは異なるアプローチが必要ということです。

とはいえ、上場まで果たすような企業は、このプラスの循環の基盤は構築済みである可能性が極めて高い。上場と好循環の条件は、土台のかなりの部分で、通底するからです。

問題は、その違いに気がついて、しっかりと訴求できているかどうか。その点につきます。逆説的に言うと、気がついていない企業は実に勿体無い。

気がついているかどうか。私はこんなところで、既存の大企業に大きく負けて欲しくないのです。本当に、惜しい。

上場が、自社が抱える社会的なポジショニング問題の全てを癒す。そんなことは決してないのです。

あなたはそんな勘違いをしていませんか?

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