• TEL : 03-6822-4810
  • 〒151-0051
    東京都渋谷区千駄ヶ谷 5-27-5
    リンクスクエア新宿 16F

今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第23話 なぜ動画をつくっても、何の反応もないのか

「シモヤさん、動画をつくってネットに上げたのですが、何の反響もなくて…」

現在、「継続的に」有名マスコミから取材が入る仕組みづくりの支援に取り組んでいる、あるサービス業の経営者から伺った言葉です。

聞けば、あるネット動画製作会社からオファーを受け、自社をアピールする動画を作ってみたものの、社内外から何の反応もないとのこと。実際にその動画を見ると、すぐに理由がわかりました。あまりに安易につくっているからです。ナメているとしか言いようがない。

最もカンタンに、何の専門技術もない人間が、動画をつくる方法があります。それは、ひとつのパターンをつくって、そこに当てはめるというものです。

映像構成でいうと、経営者のインタビューを30分程度撮影します。インタビューの合間に、社内風景などのイメージ映像を挟むというパターンです。経営者へのインタビュー項目も定型のものをつくります。どんな経営者にも同じことを聞きます。さらにはインタビューでの回答が何であれ、順番通りにただ聞いていきます。話を発展させることは、ほとんどない。

この方法ですと手間は全くかかりません。作る側の専門性も一切不要です。そしてテキトーなテロップと音楽を入れれば、一丁上がりです。映像制作のプロが見れば一瞬でわかる、安直な制作方法です。

この方法は制作会社からすると、最も効率的なやり方です。ですが、取材される側の企業から見ると、最も意味のない方法です。

言うなればフランス料理も、懐石料理も、中華料理も、全部お決まりの器に淡々と盛り付けているようなものです。しかも、そのお決まりの器はコンビニ弁当の容器のような安っぽさ。そんな安直な方法で、一体何が伝わるというのか。

現在の視聴者の眼は極めて肥えています。業界トップクラスの製作者が、手間を惜しまず、徹夜続きで作った映像を毎日みているのです。自宅ではテレビ、移動中はスマホと、時と場所を問わず、です。

何のスキルも、映像制作に特段の情熱もない人間(私はこうした人々を製作者とは呼びません)が作った「映像もどき」で、心を打たれる視聴者がいるはずがない。

私がテレビ東京でキャップとして番組制作をしているときは、週に2日は会社に泊まり込んでいました。放送数日前には、睡眠時間は1日1、2時間となります。ストーリー構成は、何度も何度も練り直します。少しでも納得できない点があると、絶対に作り直します。それが、視聴者が気がつかないようなレベルのものであってもです。

そこまでやって初めて、経営者も気がつかなかったその企業の魅力を構築し、視聴者に届けることができるのです。

番組の放送後には、分刻みの視聴率が出てきます。映像のどの構成要素で視聴者がついたか、逆に離れたのか。残酷なまでに、はっきりします。ひとりよがりの制作方法が入り込む余地はありません。そうした実戦のサイクルを何年もくぐり抜けることで、企業の魅力を再構築する映像が生まれてくるのです。

間違っても「安易な定型にはめ込んで、低品質の大量生産品が一丁上がり」というやり方では、何も伝わらない。

100社存在すれば、100通りの、人の心を打つストーリーが、絶対にあります。その企業が現在の姿に到達するまでには、経営者の挑戦、様々な葛藤、ドラマが間違いなくある。

あなたの、これまでの歩みは、そんな安物の、安直な器に入れる程度のものだったのですか?

絶対に違う。

自らの歩みにふさわしい器に入れて、その想いを届けていただきたい。私は心から、そう願っています。

「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」で500人以上の起業家を描いてきたストーリー構築法“熱狂的ファン”を生み出す実践的7ステップ