今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第2話 100億超えを実現した経営者が、共通して心がけていること
「シモヤさん、それでは創業者が、自分自身や自分の会社がどう見られているかを正しく把握するにはどうしたらいいのでしょうか」
前回のコラムで取り上げた、起業家からのご相談の続きです。こうした質問を実によく頂きます。
自分の会社を100億、さらには1,000億と大きくしてきた多くの経営者が共通して、心がけていることがあります。それは、自分を知るための「鏡」を、自社のなかに仕組みとして、設定しているということです。
一定規模まで会社を拡大した経営者は会社の中では、創業者にして、現在の社長にして、大株主です。会社の中では、誰も逆らうことができない存在です。
その会社の業務を、ゼロから立ち上げたので細部まで熟知している。そして、従業員の生殺与奪を握っている。それが創業者です。ですから、そんな圧倒的な実力と権力を握っている人物に率直な考えを直言する従業員は、まずいません。そして、取引先にとっては、他人事です。変なことを言って、関係をこじらせたいとは思いません。
「本当のこと」を創業者に言ってくれる存在は、内にも外にも、いないということになります。
この必然的に陥ってしまう「罠」を避けるための仕組みを、自分の会社を100億超の規模にまで拡大している経営者は、巧みに設定しています。
例えば、私が仕えたソフトバンクの孫社長は、アンケート調査を多用します。自らツイッターを駆使し、多くの消費者と直に接したことで、自分が世間からどう見られているかを知ることができます。アンケードやツイッターだけではありません。ここには書けませんが、自分が「裸の王様」にならないための仕組みをいくつも埋め込んでいました。
番頭役として、HONDAの本田宗一郎氏には藤沢武夫氏が、ソニーの井深大氏には盛田昭夫氏がいました。お互いの弱点を補うだけではなく、創業者にとって、お互いが、自分を知るための「鏡」のような存在だったはずです。
「鏡」がなくては、自分の身繕いを見ることはできないのです。
あなたは経営者としての自分や自社が、どう見られているか、正確に知るための「鏡」を持っていますか?