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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第73話 デキる社長は税理士に大事な話を相談しない

PRに力を入れようという社長は、みな成長志向が強く、バイタリティ溢れる経営者ばかりです。私もかつてはテレビ東京で経済部記者として、数々のベンチャー企業を取材し、今はPR戦略コンサルタントとして、PRに力を入れる成長志向の強い中小・ベンチャー企業の経営者の方々と接していると、いくつかの共通点があることに気が付きます。

その共通点のひとつが、「大事な経営判断を税理士に相談しない」ということです。税金以外のことを税理士に相談する経営者で、「デキるな」と思う人に一度も会ったことがありません。

「成長企業の経営者が税金以外のことを税理士に相談しない」というのは、決して偶然ではありません。理由の一つは税理士に限らず、「資格で生計を立てよう」という人は、そもそも保守的な性格であることが多いからです。保守的な性格に人に相談するわけですから、保守的な助言しか出てきようがありません。その結果、「やっぱり攻めるのは止めよう」という結論になってしまいます。

もうひとつの理由は、税理士は新規事業の経験も、経営経験も十分には持っていないということです。税理士事務所は経営しているかもしれませんが、一般企業の経営に比べると、求められる資質はかなり限定的です。「経営者が税理士に経営に関する相談するをする」というのは、プロ野球選手がアマチュア野球の選手に、コーチを依頼するのに近いかもしれません。

「性格が保守的で、事業経験が乏しい人」が何か助言を求められたら、どのように答えるでしょうか。「税理士」という立場もありますから、相談された以上は何か「もっともらしいこと」を言わなくてはなりません。「攻めるべき理由」を述べるのには、勇気が要ります。事業経験も必要です。ですが、「止めるべき理由」をもっともらしく述べるのに、勇気も経験も必要ありません。

そして最後の理由は、そもそもなぜ税理士に相談しようと思うのか。その心理の根底にあるものは何なのか、ということです。税理士に相談する経営者は、内心、攻めるのが怖いのです。かといって、攻めなければ、未来が暗いことも、わかっている。そして相談すれば税理士が止めてくれることも、じつはわかっています。止める自分自身に言い訳をするために、税理士という「ちゃんとしてそうな人」に止めてほしいのです。

ソフトバンクの孫社長、楽天の三木谷社長、サイバーエージェントの藤田社長、あるいは京セラの稲盛名誉会長。こうした傑出した経営者が、(税金以外の)重要な経営判断を税理士や会計士に相談している姿が想像できるでしょうか? 絶対にありえません。

税理士ではなく従業員に相談しても、じつは同じことです。従業員は「成功の果実」を得ることよりも、「失敗の責任」を取ることを恐れるものです。そもそも「成功の果実」を積極的に掴みにいくほどアグレッシブな性格であれば、従業員という立場にとどまらず、自分で起業します。

「攻めの経営判断」の背中を押してくれる人は、そもそも、ほとんどいないのです。経営者は「攻めの判断」をするときは、最後は自分自身ひとりでするしかないのです。

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