今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第54話 「戦略」と「戦術」を混合しない
先週は講演に登壇するため、浜松に行きました。受講者は浜松に本社を置く世界的メーカーの従業員と加盟店のリーダーの方々。「デジタルマーケティングの理論と実践」と題して、2時間しっかりと伝えさせていただきました。さすが世界的メーカーの関係者の方々だけあって、デジタルマーケティングには、かなりの知識をお持ちでした。
浜松といえば、うなぎ。ということで、浜松に地縁のある、Y社長オススメの名店「うなたん亭」で、「まぶし」をいただきました(写真)。期待通りの美味しさでした。Y社長、ありがとうございます!
さて、講演でもお伝えしたのですが、デジタルマーケティングの話になると、必ずと言っていいほど起こる勘違いがあります。それは「戦略」と「戦術」を混合してしまうということです。
「戦略」とは、戦いに勝つために兵力をどう動かすか、総合的・大局的・長期的な視点で考え抜いたシナリオです。一方、「戦術」とは戦略で設定した目標を達成するための、具体的な手段のことです。
つまり、「戦略」の方が「戦術」よりも上位にある概念です。「戦略」が決まらなければ、「戦術」は決めようがない。そして、「戦略」と「戦術」は必ずセットとなるものです。
フェイスブックやインスタグラムといったSNSの活用は「戦術」です。なにか「戦略」があって、はじめて「戦術」としてSNSを用いるのが本来の姿。にも関わらず、「流行に乗らないと」という理由だけで、「戦略」なく、ネットを使う事例が実に多い。
楽天とアマゾンとゾゾタウンでは、「ネット販売」と同じ単語で括れる業種です。ですが、「戦略」が全く異なるので、「戦術」である販売サイトのデザインは全く異なるものとなっています。
さらに言うと、「戦略」に合致しないのであれば、ネットを使わないという選択肢だって、ありうるのです。
さて、「戦略」と「戦術」の混合はデジタルマーケティングの世界「だけ」で起きているわけではありません。「ストーリー」を巡っても、頻発している問題です。
商品紹介のPOPやサイトに開発ストーリーを書く。あるいは、採用サイトに先輩社員の入社からのストーリーを書く。これらは全て「戦術」です。
ソフトバンク、楽天、サイバーエージェント、ジャパネットたかた、ゾゾタウンなど、急成長を果たした企業の基本「戦略」は創業以来、一貫しています。一貫した成長戦略ストーリーを歩んでいます。変化しているように見えるのは「戦術」です。
「戦術」は商品ごとに変えなくてはなりません。最新技術を取り入れる、あるいは変わっていく時代に合わせていくことも必要です。
ですが、経営者の本当の想いに根ざした骨太の「戦略」は、一度決めたら、早々変える必要のないものです。そして、それはストーリーの形となって現れ、顧客や従業員をワクワクさせる。そして、明確な将来像をわかりやすく指し示す。このようなストーリーの持つ求心力が、成長のエンジンとなるのです。
骨太なストーリーは時代を越えていきます。執筆から100年以上経たシェークスピアの作品は、今でも世界中で上映されています。オペラや落語の古典も同様です。初期の「スターウォーズ」や「2001年宇宙の旅」は最新CGを用いなくても、いまだに根強い人気を誇っています。
間違っても、どこかのフリーライターがパパッとエピソードをきれいに書き記したような、安易なものではありません。外形的に似たようなものとして現れるのですが、根ざしている深さが全く違うものなのです。
そして当社が提唱しているのは、言うまでもなく、成長「戦略」ストーリーです。
「戦略」と「戦術」を混合しない。そして、「戦略」と「戦術」はセットだということ。ぜひ、心がけてください。