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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第51話 ビットコインは、なぜ「ウサン臭い」のか

最近、私、シモヤの職業的な視点から、すごく「もったいないな」と思う存在があります。それは、ビットコインです。ちなみに、シモヤ自身はビットコインには一切投資してはいません。

何が「もったいない」のかというと、とにかく世間のイメージが悪すぎるということです。人によっては、ビットコイン事業者をペテン師か詐欺師のようにすら見ています。

新しい存在は、登場時には「ウサン臭い」と思われるのが世の常です。ですが、ビットコインは過去の「新しい存在」に比べても、格段にイメージが悪い。

かつて、何度か「ITバブル」と称される現象がありました。2000年代には「ヒルズ族」なる言葉が出てきました。私、シモヤは当時、経済報道番組の取材の最前線にいましたので、メディア内部でどのように「ITバブル」を捉えていたのか、身を以て知っています。

「バブル」は常に「ウサン臭い」ものとして、報じられます。「ITバブル」もそうでした。この点は、現在のビットコインなどの「仮想通貨バブル」と変わりません。

「ITバブル」と「仮想通貨バブル」で異なるのは、「核」となるものへのイメージです。これが、根本的に異なります。

「ITバブル」時には、「ヒルズ族」が「ウサン臭い」存在として取り上げられました。派手で、金満的な生活が盛んに報じられたものです。ですが、バブルの「核」にある、ITの持つ可能性を疑う声は、ほとんどありませんでした。

「ウサン臭い」のは、あくまでITの周辺にいる「ヒルズ族」。それが、世間の抱いているイメージだったのです。これは古い話ですが、80年代の「不動産バブル」でも同様です。「ウサン臭い」のは「不動産バブル紳士」であって、不動産そのものではありませんでした。

なぜ、ビットコインの周辺ではなく、存在そのものまで「ウサン臭い」と思われるのか。それは、情報発信の「核」がないからです。発信されている内容のほとんどが「儲かるかどうか」。その一点だからです。

内輪の業界内では、様々な議論が交わされているのでしょう。ですが、その声が外の世界にまで聞こえる事はほとんどありません。

「儲かるかどうか」だけでは、「パチンコ必勝法」と変わりません。当然、社会的な地位や名誉が確立することもありません。永遠に「パチンコ必勝法」レベルです。

「儲かるかどうか」という損得だけでは、人の心を本当に動かすことはできません。

たとえとして、かなり不適切ですが、オウム真理教が挙げられます。先週、教祖・麻原彰晃の死刑執行がありました。

オウム真理教の広瀬健一死刑囚は、私が在籍した早稲田大学大学院理工学研究科物理学専攻の研究室の、真隣の研究室出身です。なので、在学当時から様々な話が聞こえてきました。

極めて優秀な成績で、大手電機メーカーの内定も得た矢先に、オウム真理教への出家を決意。当時の指導教授は必死で思いとどまるよう説得しました。その教授は学部で最も「大らかな性格」として知られる方で、決して生徒の進路を「指導」するようなタイプではありません。ですが、広瀬健一死刑囚は決意を変えることはありませんでした。

損得で言えば、オウム真理教への出家は間違いなく、損です。正しいか否かで言っても、正しいとは言えません。それは地下鉄サリン事件のような、許されざる凶悪事件を起こす前から、変わりません。

物理学を専攻し、「合理的」な思考ができる人間であっても、論理だけでは動かないということなのです。

「合理性を超えた核」。ビットコインに欠けているのは、この「核」なのです。ビットコインのような、大きな広がりを生み出している現象ですら、「核」がなければ、「ウサン臭い」ままです。

誰か、発信する情報に「核」を埋め込んだビットコイン事業者が出てくれば、あっという間にスターダムにのし上がるでしょう。

これは企業の発信する情報すべてに通じます。「急成長企業」、「高い給与」、「高性能」といった「合理的な判断材料」だけでは十分ではないのです。「合理的な判断材料」の羅列であれば、家電製品の取扱説明書と変わりません。

「合理的な判断材料」に加えて、「核」を埋め込んだ情報を、ぜひ、発信してみてください。

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