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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第50話 エリート経営者が犯しがちな、勘違い

「シモヤさん、ニュース番組に出るにはいくらくらいかかるか、教えてもらえますか」

一度名刺交換したことがあるだけの、人材コンサルティング会社からメールが来ました。その会社のクライアントで、ニュース番組出演を飛躍のきっかけにしたいベンチャー企業があるとのことでした。

メールの文面からは「掲載料はいくらくらいなのか」というニュアンスが伝わって来ました。以前のコラムでも書きましたが、テレビ東京など全国放送のニュース番組、あるいは日経などの全国紙で、「カネを払えば出られる」ということは絶対にありません。

一部のそれほど有名ではないビジネス誌で、掲載料を取って記事化するということは確かにあります。ですが、キー局のニュース番組や日経クラスの新聞では、絶対にありません。そんなことは冷静に、論理的に考えれば、すぐお分りいただけることだとも、以前のコラムで書きました。

そのメールの主には電話で丁寧に説明したのですが、どうも理解できないようでした。電話口で、矢継ぎ早に、言葉が続きます。

「創業者は、ものすごいエリートの経歴です」

「画期的なビジネスモデルだと、その企業は自信を持っています」

そんなすごい企業だから、ちょっとしたきっかけさえあれば、メディアの注目を集めないはずがない。そう自信満々に言い張るのです。

この認識は全く正しくはありません。ですが、ものすごく「よくある勘違い」でもあります。

20年前なら「ピカピカのエリートが大企業を離れて起業」は、確かに珍しいものでした。ですが、今では当たり前の光景です。毎日数百通のプレスリリースを読んでいると、IT関連のベンチャー企業であれば、有名大学・有名企業出身者の方が多いのではないかと思えるほどです。

「画期的なビジネスモデル」も、実は珍しいものではありません。

もちろん、本当に「画期的なビジネスモデル」は滅多にあるものではありません。ですが、ほとんどすべてのベンチャー企業は「画期的なビジネスを始める」と対外的に宣言して、会社を設立します。「画期的」は、ベンチャー企業の常套句なのです。

もっと踏み込んで言ってしまえば、本当に「画期的なビジネスモデル」なのか否か、そもそも記者一筋の人間に判断できるはずがありません。記者の後ろに控えている、ほとんどの視聴者や読者も判断できません。

「画期的なビジネスモデル」を生み出した「エリートの創業者」の「身の上話」を小ぎれいにまとめた文章で読まされたとしても、それは変わりません。理由は、以前の別のコラムで書いた通りです。

「身の上話」を語るだけで、他人の共感や支持を得られるなら、世の男性は全員「超絶モテ男」になっています。他人の「身の上話」など、聞き手にとっては、どうでもいいことです。

つまり「エリートの創業者」や「画期的なビジネスモデル」があるからと言って、有名経済メディアを味方にすることができるわけではないということです。そして「エリートの創業者」や「画期的なビジネスモデル」だけでは、視聴者や読者の支持や共感を得ることもできません。

情報発信の要諦には、全く別の論理が働いているということなのです。その違いを認識しなければ、いつまでたっても、ひとり「エリートの自慢話」を延々と語り続けることになってしまいます。その先には、誰からも、何の反応もありません。

ここまで述べて来ましたように、「エリートの創業者」や「画期的なビジネスモデル」があるからと言って、有名経済メディアを味方にし、継続的に、何度も取り上げられるわけではないということです。カネを払えば何とかなるようなものでもありません。

これは裏返して、言うこともできます。

「エリート」でなくても、「画期的なビジネス」でなくても、タダで、有名経済メディアを味方につけることができる、と言うことです。そして、メディアの先にいる消費者に対しても、同様です。情報発信の要諦を抑えているかどうか。ポイントはそこにかかっています。

ぜひ、情報発信の要諦を抑えたうえで、取り組んでみてください。

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