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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第45話 日大アメフト部にみる、情報発信を誤る企業の共通項

日大アメフト部での、悪質な反則を巡って、日本大学の、あまりに稚拙な情報発信や危機対応が批判を浴びています。ですが、多くの中小企業にとって、笑ってはいられません。日大の対応、強い経営者がいる中小企業が犯しがちな情報発信の失敗パターンそのものだからです。

私はコンサルティングで、成長企業500社に共通する情報発信の「型」の基盤構築を支援しています。成功の「型」がしているように、失敗にもまた、共通項があるのです。

中小企業が情報発信、特に危機管理の際に失敗する原因。それは、実はその中小企業がここまで成長してきた理由と表裏一体のものです。

失敗の原因で共通するのは、経営者に強いリーダーシップがあるということです。

「リーダーシップがあって何が悪い」と思われるでしょうが、その通り。中小企業は、経営者と従業員では、成長への意識、持っている能力など、あまりに差があるのが実情です。ですから、中小企業の成長過程において、経営者の強力なリーダーシップが不可欠なのは、言うまでもありません。

ただし、この「強み」が、情報発信では逆にマイナスとして作用するのです。

まず、経営者のリーダーシップが強力すぎて、周囲の反応の正確な情報が入りません。経営者ご本人が得意な専門分野であれば、ご自身が肌で状況を理解できています。なので、状況認識を誤ることは、少ない。

ところが、情報発信は、どの経営者にとっても専門外です。経営者自身が、専門分野のように、肌で状況判断ができない世界なのです。経営者の専門分野ではないので、社内の担当者、あるいは社外の専門家に意見を求めることになります。

ところが、社内の担当者にとっても、社外の専門家にとっても、経営者の強いリーダーシップは脅威です。意見を求められても、無難なこと、あるいは経営者の反応を忖度して、当たり障りのないことしか言わない。

「経営者は孤独」と言います。その孤独が最も現れてしまうのが、情報発信の分野なのです。

日大は、危機管理に大失敗した例です。しかし、危機管理だけではなく、前向きな情報の発信においても、この失敗の仕組みは全く同じように発動します。危機管理と異なり、致命傷にいたることが少ないので、目立たないだけです。

以前のコラムで、「情報発信の導火線に火をつけられるのは、社内で経営者だけ」と書きました。けれど、最も失敗しやすいのもまた経営者なのです。しかも成功している経営者ほど、失敗しやすい。ここに、中小ベンチャー企業の情報発信が、なかなか上手くいかない構造的な問題のひとつがあります。

セミナーではお伝えしていますが、ソフトバンクの孫社長や、ジャパネットの高田社長など、中小企業時代から自社のプロデュースに成功してきた名経営者は、例外なく、この罠を逃れる仕組みを自社に導入しています。それは経営者自身の自己・自社認識を、日々、調整し、社会全体の見方とのズレを自覚するための、構造的な仕掛けです。

「1回、アンケートをとる」という程度の、安易なものではありません。

自分自身から見た自己、あるいは自社への認識を、社会全体の見方とのズレを自覚するための、構造的な仕掛けを、ぜひ導入してください。それは成長企業に共通する、情報発信の「型」の一端なのです。

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