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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第43話 【番外編】TOKIO不祥事に見る、危機管理術

みなさまはゴールデンウィークをいかが過ごされたでしょうか? 私、シモヤは遠出することなく、自宅に篭って、企画を書いていました。メールも電話も、普段より格段に減るので、まとまった時間を集中して、思考に充てることができました。

さて、この連休中にワイドショーはTOKIOの謝罪会見、一色でした。シモヤはどうしても仕事柄、情報の危機管理という側面で見てしまいます。

当初、山口メンバーを解雇ではなく、無期限謹慎という中途半端な形にしたこと、山口メンバーの甘い現状認識が露わになった結果、ネットを中心に批判が広がりました。ですが、山口メンバーを最初から解雇にしなかったこと以外は、さすがジャニーズ事務所、うまく収めたという印象です。初動のミスを、その後の戦術によって最小限に抑えたということになります。

初動のミスは言うまでも無いことなので、その後の戦術の巧みさについて書きます。

巧みさを感じたのは、まず山口メンバー以外の謝罪会見です。山口メンバー以外は何も悪いことはしていないので、そもそも会見で糾弾されるはずがありません。最初から「仲間の過ちに真摯に向き合う他のメンバー」という印象しか、与えるはずがありません。つまり、最初からジャニーズ事務所側の負けはない記者会見の設定内容です。

この会見のもうひとつの巧みさは、会見の時間設定です。時間ですが、14時に1時間半行われました。14時に行うのは、ワイドショーを完全ジャックするためです。生中継で1時間半に渡って、自分たちの主張をそのまま視聴者に伝えることができます。生中継なので、編集される余地がありません。

週刊誌対策でも巧さを感じさせました。ジャニーズ事務所が最も神経質になるのは、週刊文春、週刊新潮です。テレビ、スポーツ紙はジャニーズ事務所に一定の忖度しますが、この2誌は別です。

まず山口メンバー以外の謝罪会見で、週刊誌の出席を認めていませんでした。芸能の記者会見というのは、シモヤの専門のニュースとは相当異なる世界です。

記者会見の口火を切る質問は、有名芸能レポーターの井上公造氏。その次の質問もテレビで顔を出しているレポーターが続きます。芸能レポーターのいわば「格」の順で、質問がなされるのです。こういう暗黙の了解のような風習は、同じ「マスコミ」と言っても、ワイドショーとニュースでは全く異なるのです。

さて話を戻すと、連休期間中なので、そもそも週刊誌は刊行されません。最新号が出るのは、山口メンバー以外の会見の約2週間後です。ニュースの鮮度としては、相当に落ちています。つまり記事としての扱いは、よほどの新事実でも明らかにできない限り、小さくならざるを得ません。

そして最後のトドメとして、連休最終日の日曜に、山口メンバーの契約解除を明らかにします。文春、新調が出る連休明け木曜の時点では「2週間前の記者会見、すでに不祥事の当事者は解雇」となっています。相当にニュースとしてのバリューが落ちているわけです。ジャニーズ事務所として、可能な限りの危機管理はできていると言えます。

ただ従来型の危機管理戦術としてみれば、かなり高いレベルにあるジャニーズ事務所ですが、時代の流れを感じさせる現象もありました。それはネット世論です。ネットは概ね、ジャニーズ事務所の対応に否定的だったように見えます。芸能界で最もネット嫌いで知られている事務所だけに、ネット対策は眼中にないのでしょう。この点が、既存マスコミとネット世論、両方の操縦に長けた、ソフトバンク孫社長と大きく異なるところです。

ここまで危機管理という側面で書かせていただきました。危機管理なので、ネガティブな情報の拡散をいかに抑えるかという視点からのテクニックです。これを裏返すと、企業がポジティブな情報を拡散させたいときにも、危機管理と同様に、テクニック次第で、効果が天と地ほど異なってくるということになります。

伝えるべきストーリーを固めたら、それをいかにして広げ、浸透させるか。効果を最大限に高めるために、ぜひ、様々な技術と工夫を駆使してください。

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