今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第41話 地方企業が追い風を活かせない理由
「うちなんて田舎の会社ですから、取材受けるのは難しいですよね」
先日、関東と東北の間あたりにある企業の経営者の方が、お越しになり、半ば諦め気味にこんなことを言われました。
「むしろ逆です!この1、2年が地方の企業にとって、最大の追い風なんですよ」
私、シモヤはこのようにお伝えしました。これは別に社交辞令で言ったわけでもなく、本当にそうだからです。
地方企業に強い追い風が吹いているという理由は、3つあります。
ひとつは、そもそも「地方発」というだけで、東京のメディアの人間は(勝手に)ロマンのようなものを抱くからです。テレビ業界でいうと、地方の風景は映像になりやすいという事情も、加わります。
もうひとつは、競争が少ないということです。東京の中小ベンチャー企業の多くが情報を(一応)発信をしています。その99%がズレているのですが、量だけはやたらと多い。つまり、かなり精査した上で発信しないと、埋没してしまいます。
渋谷のスクランブル交差点に、「まずまずかっこいい男性」や、「それなりにかわいい女性」がいても、目立たないのと同じです。
ところが地方で情報発信している企業は本当に少ない。人口や企業数の少なさを考慮しても、少なすぎる。なので、一定水準のものを発信すれば、目に飛び込みやすいのです。
そして最後のにして、最大の理由があります。それは東京五輪です。この1、2年は経済ニュースの分野でも、メディアの側は東京五輪を意識するようになります。
東京五輪を普通に扱えば、東京の巨大再開発になります。ですが、それは全メディアが取り扱うし、あまりにも当たり前すぎる。記者の性質としては、普通と逆のネタをやりたくなります。つまり、地方企業を取り上げたくなるのです。
これは実際に記者をやってみないと、なかなか理解してもらえない感覚だと思います。
こうした追い風が吹いているにも関わらず、その追い風をしっかり活かしている中小企業は、ほとんど存在しません。
理由は単純です。そもそも「情報発信しようという意識がない」ことに尽きます。周囲でも誰も取り組んでいない。だから最初から、自分たちには関係ないことと諦めているのです。
もうひとつ理由を付け加えると、書籍やネットで出回っている手法が、かなり嘘くさいものが多いということです。私も何冊か読んでみましたが、実際に番組を創っていた人間からすると、「?」となる内容のオンパレードでした。
仮に情報発信の意識を持って、そうした本で勉強して取り組んでも、成果を出すことは極めて困難です。
そもそも意識がない、意識を持っても正しい情報が流通していない。意識がないのはご本人が意識を変えれば済むことです。ですが、情報がないのは如何ともしがたい。「玉石混合」といいますが、圧倒的に「石」が多いのは、PRや広報という業界全体が抱える問題点でもあります。
まず意識を持つ、そして正しい方向に舵を取る。そうすれば、強い追い風を受け、驚くほどの成果を得られるのです。
ぜひ、トライしてください。