今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第40話 成功の「型」と失敗の「型」
「シモヤさん、すごいアイデアだと思うので、これ、事業にしたいんですよ」
先日、知人の紹介でお越しになられた経営者から相談を受けました。「素晴らしいアイデア」の企画書を持参され、自信たっぷりに話されます。アイデアには自信があるけど、今までは受託開発一辺倒で、新規事業の構築経験がない。そこで、シモヤに「最後の仕上げ」の部分を手伝って欲しいというハナシでした。
が、話を聞いても、素晴らしいアイデアとは思えません。というより、類似のサービスが山ほど、安価に出ている分野です。「仕上げ」どころか、根本的に見直さないと極めて厳しいことは明らかです。
そこで、シモヤとしては知人を介して、こうお伝えしました。
「本気で粘り強く、半年くらいかけて、抜本的に見直す覚悟があるようでしたら、全力で支援します。が、今のアイデアを微修正して、1ヶ月くらいで事業化できるとお考えなら、他の方が適任です」
結局、その方はシモヤに依頼されませんでした。
この出来事で思ったことがあります。それは失敗にも「型」がある、ということです。
急成長を遂げる中小ベンチャー企業の情報発信の仕組みは数種類の「型」にきれいに分類できます。その「型」を企業に植え付けるのが、シモヤのコンサルティングです。
では反対に、失敗の「型」は何だろうか。
そのひとつは「自分がわかっていないということを、わかっていない」ことだと、今回の件で改めて思ったわけです。
誤解なきように申し上げておくと、冒頭の経営者の方はゼロから売上1億の会社を立ち上げたので、得意分野では優秀であることは間違いありません。
が、受託開発という自分の専門分野から離れると、「自分がわかっていない」こと自体に気がつかない。
ゴルフや野球で、プロの選手のフォームは、一見選手ごとにバラバラのように見えて、各自の方法で基本的なポイントは抑えています。
スポーツでも、成功のための「型」があるわけです。
ゴルフでもスイングのフォームは、自分だけでは見ることができません。録画をして見直す、レッスンプロに見てもらうといった、何らかの「自分を見るための仕組み」が必要です。外部から見て、フォームを見直し、改善し、固めていく。そして練習場で固めた上で、コースという実践に挑むわけです。
ところが、自分のフォームがかなり良いと本人「だけ」が勘違いしていたら、どうでしょう。
「あとは実戦あるのみ」とコースに出たところで、決して好スコアは出出ないでしょう。本人「だけ」はフォームはできていると思っているので、練習場に行くこともなく、ひたすらコースで実戦に挑む。
「コースで結果が出ないのは、フォームの問題ではなく、運や経験の不足である」と、抜本的な原因に気づかぬまま、時とカネを空費することになる。
「自分が自分の専門分野以外のことをよくわかっていない」と認めるのは、勇気と謙虚さが必要です。それは当然、私自身にも当てはまります。
ですが、その立脚点に立てなければ、成果を得ることは極めて難しい。
あなたは自分が何を理解していて、何を理解していないか。正しく認識できていますか?