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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第35話 ニュース番組出演を巡る、最大の嘘

「シモヤさん、『◯◯◯万円払えば、番組に出られますよ』という売り込みがPR会社からあるのですが・・・」

この1週間で2回も同じ質問を、それぞれ別のベンチャー企業経営者の方から受けました。この手の質問が、テレビ出演を巡る最大の誤解です。

以前のコラムでも書きましたが、私、シモヤは現状のPR会社に対して、極めて厳しい目を向けています。その最大の理由のひとつが、この手の売り込みをしている会社があるからです。出演実現の報酬として、数百万円を請求されることも。

自信を持って断言しますが、私シモヤが在籍していたテレビ東京含め、キー局の報道番組で、対価を払えば、企業が出演できるものは、ひとつもありません。もし出演を約束し報酬を持ちかけてくるPR会社があれば、間違いなく詐欺的手法です。

論理的に考えれば、このような出演はありえないことがわかります。そもそも番組にはスポンサーがいます。これはニュース番組も同様です。もし、数百万円で自社をPRできるのであれば、わざわざ数千万円、数億円を払って、そのニュース番組のスポンサーになる企業などありません。新製品が出るたびに数百万円を払った方がおトクです。

もうひとつの理由は、テレビ広告の仕切りの問題です。キー局のニュース番組は大体、大手の広告会社が販売を取りまとめています。にも関わらず、その大手広告会社を飛び越える形で、はるかに規模の小さいPR会社に対し、「数百万円で出られる」などという広告枠をテレビ局が売るという行為をできるはずがありません。こんなことをやったら、重大な信義違反です。

最後の理由は、テレビ局の体制です。報道番組に携わる社員はかなり厳しい倫理規程が課されています。例えば、取材対象者とのお中元・お歳暮の授受は厳禁ですし、飲食も社会通念上常識の範囲でしか認められていません。株の短期売買すら禁止されています。加えて、営業局などから特定の案件の放送を過度に求めることも社内ではご法度とされています。

ですので、組織的に報酬をもらって、ニュース番組に出演させるというのは、全くありえないハナシなのです。「組織的に」なければ、「社員や製作会社のスタッフが個人的にやることもあるのでは」と思われるかもしれません。ですが、これもまずありえません。

もし数十万、数百万円のために社員が出演に便宜を計り、それがバレたらどうなるか。クビ、もしくは異動・降格と、会社員として、一生陽の当たらない立場となります。軽く1,000万円を超える年収を一生得られる立場をわざわざ危険に晒す社員など、まずいません。

製作会社にしても、そのようなことをしてバレたら、半永久的にそのテレビ局に出入り禁止となります。

では、そもそもあり得ないにも関わらず、なぜ「数百万円で出演できる」などというセールスが存在しているのか。これは、裏口入学詐欺と同様の構造です。

裏口入学詐欺ではこのような言い方をするのが定番となっています。

「私が口利きをすれば、ほぼ確実に入学できる。学長にも強いパイプがあるので。だが、おたくのお子さんの点数があまりに低かったら、さすがに入学させられない。なので、実際に入学できたら成果報酬を払ってくれればいい」

実際には裏口入学の詐欺師は、誰かを入学させられる力など全くない。ですが、その依頼主の子供が本当に自力で合格する可能性もあるわけです。合格すれば「自分のおかげ」ということにして、高額の成果報酬をいただく。不合格であれば、「その子の成績があまりに低かった」ことを理由にするという手法です。詐欺師は儲かることはあっても、実際には何もしないので、損をすることはありません。

「◯◯◯万円払えば、番組に出られますよ」といっているPR会社は、私、シモヤにはこの裏口入学詐欺と同じに見えるのです。「入学」を「出演」に、「学長」を「プロデューサー」や「ディレクター」に置き換えれば、ぴったり同じです。

こうしたPR会社は必ずと言っていいほど、「成果報酬」をうたっています。約束できるわけがないのですから、当然です。

ニュース番組出演の対価を求められたら、確実に詐欺だと思ってください。くれぐれも、こうした詐欺的商法の会社にご注意を。

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