今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第34話 「メディアに出ること」を目的にしてはダメな理由
「シモヤさん、どのメディアだと当社は出やすいものでしょうか?」
先日、あるメーカー幹部の方からご質問を受けました。メディア出演を「出やすさ」を基準に判断することは意味がないとお伝えしました。
ソフトバンク孫社長、楽天三木谷社長、サイバーエージェント藤田社長が、創業期から、唯一無二のサービスでなくても、創業者に尖った経歴がなくても、メディアを有効活用できた理由を、前々回のコラムで書きました。
創業期からメディアに好意的に取り上げられ、しかも、その後に飛躍的成長を遂げた企業に共通するものがあります。それは、メディアに出ることをゴールとして設定していないということです。
あくまでメディア利用を経営の有力な手段と捉えているのです。どんなメディアでも、どんな出方でも良いという考え方を取っていないのです。当たり前のように思われるかもしれませんが、これは重要なポイントです。
有力メディアでの露出は確かに、創業期に欠如しがちな、信用力・集客力・人材採用力を飛躍的に高めることができます。ですが、そのためには「成長につながる出方」が継続的に生まれる仕組みが必要です。
わかりやすくするために、極端な例をあげます。
ワイドショーや情報番組で、全く食欲をそそられない、風変わりというだけのメニューがある飲食店が取り上げられているのを見たことはありませんか? あるいはバラエティ番組で、風変わりな製品や開発者が取り上げられているのを見たことはありませんか?
これらは「風変わり」枠とでも言うべきものです。「風変わり」は一回紹介されれば、もはや風変わりではありません。もの珍しさでほんの一瞬だけ集客できたとしても、持続的成長につながらないのは明らかです。毎年現れては消える、使い捨ての「一発屋芸人」のようなものです。
企業が目指すべきは「一発屋芸人」ではなく、何十年も最前線を走り続けている、明石家さんまさん、ビートたけしさんといった方々のようなメディアへの出方です。「一発屋芸人」にならないためには、最初から「一発屋芸人」にならない芸風を目指すことが必要です。
「一発屋芸人」は存在感が妙に強いだけに、途中で軌道修正して、芸風を変えることは極めて困難です。これは企業のメディア露出の仕方でも、同じことが言えます。デビュー当初からの芸の設計が欠かせないのです。
メディアへの出演を飛躍的成長につなげる。そのためには、メディア露出を経営手段の一環として捉える。経営戦略に沿った訴求内容、タイミングで出演する。そして実際にメディアに出演した後は、記事内で形成された企業イメージを社内外に定着させていく。そして、さらに微調整した訴求内容で、再びメディアに出る。これらを一貫して実施していくための仕組みが必要なのです。
あなたは自社の広報戦略を、単に「出られるかどうか」だけで考えようとしていませんか?