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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第26話 「技術に自信のある会社」が陥る、コミュニケーションの罠

「シモヤさん、うちの会社は技術には自信があるのですが、どうも伝わらないんです」

こうしたご相談をよく伺います。就職先を探している学生、あるいは見込み客に、丁寧に説明しても、微妙な反応しか帰ってこないとのこと。

私もテレビ東京時代、「技術に自信がある」という会社から、数え切れないほどの売り込みをうけました。が、実際に取材し放送した数は極めて少ない。私はまだ放送に漕ぎ着けたものが圧倒的に多い方。最初から取り上げる気のないディレクターが支配的でした。

なぜ「技術力に自信あり」は訴求力が強くないのか。理由は極めて単純。それは「業界のプロ」以外、その凄さがわからないからです。

「技術に自信あり」というご本人は、素人にもわかりやすく、丁寧に、細かい部分まで説明しているつもりになっていることがほとんどです。

が、聞く側はいくら丁寧に説明されたところで、「よくわからない」、あるいは「大して興味がない」ことを、「粘り強く理解できるまで聞こう」、「わからない点は質問しよう」などとは思いません。聞き流して、話が終わるのを待つだけです。

しかも「話がわかるプロ」の範囲は、実は当事者が思っているよりもかなり狭いものです。

私は大学院時代、つくば市にある、国立・無機材質研究所の外来研究員というのをやっていました。公務員研究者と机を並べる日々。物理学のエキスパートばかりです。が、私の周囲の一流の研究者たちですら、自分の専門分野から外れると「まあ、わかる」という程度です。

技術の開発者である本人は、当然ながら、その技術を全て把握している。しかもドップリとハマっている。なので、本人の「丁寧」や「わかりやすい」が、一般的な理解とズレているということも実に多いのです。

技術の専門用語以外につかっている言葉といえば「品質へのこだわり」、「職人技」、「きめ細かい対応力」などなど、当たり前の言葉ばかり。実際に実行できているかはともかく、これらはどの会社でも言えることです。

誰でも語れる言葉は、誰の心にも残らない。

技術の凄さを表現するには、自社でしか語れない内容を言葉にして、具体的に伝える。そうでなければ、何も印象に残らないのです。

「技術力の凄さ」を一般の人たちへのアピール材料に仕立てるには、それこそ技術がいるのです。ただ丁寧さと、熱心さを、心がければ伝わるというものではないのです。コミュニケーションの技術が必要なのです。技術が必要なのは、なにも製造や開発の世界だけではないということです。

人間は、言葉によるコミュニケーションを日常的に行なっています。ですから、伝えることは大して難しくないことだと勘違いしてしまいます。ここに、コミュニケーションの罠があるのです。

技術に自信があるなら、それに相応しいパッケージに包んで、伝えないといけないということです。高級ブランドの商品は、いかにも高そうな包装紙に包まれています。高度な技術もまた、同様です。

あなたは「技術への自信」をしっかり伝えることために、「技術」が必要だということを認識できていますか?

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