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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第21話 専門家に専門知識がない業界

「シモヤさんは、マスコミ掲載を得る点ではPR会社と、どう違うのですか?」

セミナー出席を検討されているという方から、メールで問い合わせを頂きました。私自身は中小ベンチャーをマスコミ掲載に導く方法論については強い自負を持っています。だからこそ、昔からPR会社の一般的なあり方について、強い疑問を抱いています。

ひとつはメディアに関する専門知識と実戦経験が圧倒的に不足している方々が「PRコンサルタント」と称して、営業をしている点です。そもそも自分で記事や特集の一本も作ったことがないという方がほとんどなのです。仮に新聞社などでの勤務経験があったとしても2、3年程度。マスコミは徒弟制度の古い業界なので、入社2、3年生であれば、自分で企画を立てた経験は皆無に等しい。誰かが立てた企画の下働きが日常です。通行人にインタビューするような仕事です。つまり、企画立案の経験はないということです。

もし、どこかのシステム開発会社が「私は一度もプログラミングを自分でしたことがありません。けれど、プログラミングの本は何冊か読んでいます。なので、当社に発注してください」などと言って来たら、どうでしょうか。強い違和感を覚えるはずです。そんな会社に実際に発注する人は、まずいません。が、PR業界ではそれが当たり前だったりします。いわば素人が素人に発注するという、滑稽な光景が日常化しているのです。

そうした業者は必然的に、奇をてらっただけの企画を「マスコミ受け」と称してクライアントに売り込んだり、経営者や製品開発者の話をまとめるだけのエピソード代筆業になってしまう。

もうひとつは根本的な業界構造です。とにかくコスト高の構造になっています。大手PR会社に発注したら、すぐに500万円くらいの見積額に達します。さらに有名媒体に取り上げられることがあると、100万円単位での「成果報酬」が発生します。合計で1,000万円なんて、あっという間です。都心の有名オフィスビルの賃料や管理部門のスタッフの賃金を稼ぐには、これくらいないとやっていけないのでしょうが、その活動内容に見合った額とはとても思えません。長年、大企業相手の取引に集中してきた業界ならではの料金体系だと思います。

最後は「有名マスコミとのコネクション」を売りにしているPR会社が、少なからず存在していることです。私は10年近くメディアに在籍した人間として断言しますが、PR会社とのつながり「だけ」で、取材が決まることは絶対にありません。特定のPR会社の担当者の案件だからと、優遇することもありません。そもそも常に売り込んでくるだけの存在を、常に売り込まれるメディアの側が優遇する理由がありえるのか、ということです。

この件については、何時間でも言いたいほど憤っているのですが、さすがにキリがありませんし、オープンな場ではかけない話も山ほどあります。

良心的なPR会社もあるのかもしれませんが、その数は極めて少ないはずです。「玉石混合」という言葉がありますが、圧倒的な数の石のなかから、たったひとつの「玉」を探すようなものです。

あなたは「素人が素人に発注する」ような行為をしようとしていませんか?

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