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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第17話 権力者が絶好調時に陥る罠

「シモヤさんは、優秀な記者だからねえ」

私、シモヤは短い間でしたが、政治記者をしていたことは、前回、前々回のコラムで書きました。政治記者時代は、主に亀井静香さんの取材をしていました。冒頭のセリフは、当時、私の上司の前で亀井さんが言ってくれた言葉です。私の上司にちゃんとアピールしてくれる、きめ細かい気配りの方でした。その亀井静香さんが先週、引退を発表しました。

私が取材していた当時、亀井静香さんはまさに全盛期。自民党の政調会長として、経済政策をバンバン仕切っていました。テレ東にとって、経済政策は重要取材テーマ。私もかなりの緊張感をもって、日々の取材に当たっていたことを思い出します。

亀井静香さん、森元総理、それに私など3人の記者で飲んだことを思い出します。あるいは、大勢の記者とともに、亀井静香さんと忘年会をし、生バンドを呼んでのカラオケ(生オケという方が適切かも)、そして調子に乗って、亀井静香さんにヘッドロックをしたのは、若い頃の少し恥ずかしい思い出です。

権力の絶頂にあった当時の亀井静香さんを見ていて、危うさを感じることもありました。それは、自己認識が少しズレているのではないかということでした。話をしていると、その言葉の節々に、「自分が国民的人気政治家で、国民の大きな支持が自分にはある」という自負が強すぎるように思えたのです。

そんな危惧を感じいていたなか、すぐに私は亀井静香さんの担当記者を離れ、WBS専属担当となります。亀井静香さんはその後、郵政解散で世論と自分の派閥の議員たちの動きを見誤り、ごく少数の議員とともに、自民党を追われることになります。

亀井静香さんは大変、頭の回転が早い方です。同時に、とても繊細な方でした。国会のほど近くに、自分が落ち着ける部屋を借り、ひとり静かに油絵を描くのが、亀井静香さんの癒しの時間でした。繊細であったゆえか、亀井静香さんは周りに、自分を心地よくしてくれる人間を多く置いていたのかもしれません。周囲には、他の大物議員より、亀井さんの顔色を忖度する種類の方々が多かった感があります。

「高ころびに、あおのけに転ばれ候ずると見え申候」(=出世すれば、やがて驕りが生じ、足元をすくわれ、梯子から落下して仰向けに転ばされるだろう)

これは毛利の参謀役、安国寺恵瓊が絶頂期にあった織田信長を評した言葉です。その後の織田信長の展開は、言うまでもないでしょう。亀井静香さん、織田信長と、権力者が自己認識を正しく持つことが、いかに難しいことか、改めて思い出させてくれます。そして、その落とし穴は何の予兆も見せず、突然、眼前に現れ、気が付いた時にはもう遅いのです。

こうした「たか転び」は何も織田信長や亀井静香さんのような、大権力者に限ったことではありません。中小企業の経営者、大企業の管理職、そしてコンサルタントと枚挙にいとまがありません。こうした心理的な作用は、人間にとって陥りやすい、不変の法則なのでしょう。

あなたは「たか転び」に陥らないための仕組みを用意していますか?

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