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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第16話 総選挙の情報戦から学ぶ、時間戦略

前回のコラムで、私、シモヤが短い期間ながら政治担当記者をしていたと書きました。選挙戦真っ只中のこの時期ですので、今回も総選挙の攻防から垣間見える、時間設定の重要性について、お話しします。

先週25日、安倍総理は解散を正式表明しました。同じ日に小池都知事は新党旗揚げを発表しました。この2つの記者会見の時間設定が何とも絶妙です。どう絶妙なのか、具体的に解説していきます。

(13:00 新聞夕刊 〆切)
 14:00 小池都知事 記者会見
(18:00 テレビ ニュースの全国放送)
 18:00 安倍総理 記者会見
 
上記は25日のマスコミの作業と政治家の動きを時系列で並べたものです。何気なく見える、この記者会見の開始時刻が情報発信の効果を最大限に高めるうえで、絶妙の設定となっているのです。

まず、小池都知事は安倍総理の解散表明と同じ日の14時に会見で、新党結成を発表しました。「同じ日」であること、会見が「14時」であること。この2つにちゃんと意味があります。

まず同じ日に発表したのは、安倍総理の会見にぶつけたかったからです。ぶつけることで「安倍総理の対抗馬は他の野党ではなく、自分」というニュースでの扱いになります。対抗馬の中でも、一気に主役に躍り出ることができるのです。そして、総理大臣が記者会見をする日なので、マスコミ各社が政治ニュースを大々的に取り上げる日になります。小池新党の扱いも、他の日よりも、自ずと大きくなります。

そして、もうひとつの絶妙である「14時」。本来、この記者会見は都知事として以前から設定されていた、定例会見です。当然、都の行政に関する話以外をするのはルール違反です。が、あえて小池都知事はルールを越える形で、新党発表の話を定例会見でしました。それほど、この14時という時間が絶妙だったからです。これよりも早くても、遅くてもダメなのです。

早く設定すると、上表の夕刊の〆切に間に合ってしまいます。すると、新聞は第一報を夕刊に差し込みます。夕刊で扱えば、翌日の朝刊での扱いは2度目なので、小さくなります。新党発表のインパクトを最大化するには、夕刊よりも格段に読まれる朝刊に第一報が入る形にしなければなりません。加えて、14時という時間は民放各社がワイドショーを放送しています。生放送で記者会見が報じられる可能性が極めて高くなります。

では、14時よりも遅いとどうなるか。今度は小池都知事の記者会見の終わりが、安倍総理の記者会見の開始時刻とバッティングしてしまう危険があります。時の総理の会見とぶつかれば、当然、テレビは総理を優先します。

14時という時間は、夕刊の〆切に入らない、ワイドショーの生放送にドンピシャ、安倍総理の会見ともぶつからない。まさに、絶妙の時間なのです。

一方の安倍総理も堅実な記者会見の時間選択をしています。夕刊〆切に入れたくないのは、小池都知事同様です。そして、18時であれば、民放のニュースで生放送されます。生放送であれば、自分の主張を、そのまま国民に届けることができます。テレビ局の編集が入らないからです。

実は安倍総理としては、18時以外の選択肢もありました。19時のNHKニュースにぶつけるという方法です。18時と同じく、生放送で自分の主張をそのまま伝えることができます。しかもNHKの視聴者は、投票に必ず行く高齢者が多い。

では、なぜ18時にしたのか。すでにここまでで字数が多くなってきたのと、そこにはオープンな場では書きにくい事情があります。それはまた、直接お会いする機会のある方にだけ、お話しさせてください。

企業が情報発信する際は、ここまで1時間刻みに気をつけないといけないことは多くないでしょう。が、1日単位で情報発信の効果が全く異なることは日常茶飯事です。以前のコラムでも書きましたが、「時は金なり」の格言は情報発信にも、これ以上ないほどに、ぴったりと当てはまるのです。

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