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今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第15話 総選挙の情報戦から学ぶ、経営者の顔の使い分け

私、シモヤはテレ東時代に短い期間でしたが、政治報道も担当していました。

昨日、衆院解散が表明されました。ということで、今回はいつもと趣は異なりますが、選挙報道から企業が学ぶべき、情報発信のタイミング設定についてお話します。

選挙の告示日以後、政治ニュースの伝え手は大きな制約を受けます。それは「報道機関は中立公平」という建前に大きく縛られるようになるということです。

よく政治ニュースの最後に、取ってつけたように、当選確率がほとんどない候補の紹介を入れるのが、その典型です。討論番組では小さな政党の幹部も必ず呼ぶ、各党の発言時間もできるだけ偏りがないようにしないといけません。各党の公約も大体同程度に取り扱います。各社の報道姿勢が投票結果に直接的に影響を与えないようにするという、建前から生まれた制約です。

この報道機関側に課せられた制約は大政党からすると、由々しき問題です。これまで大々的に取り上げられてきた自分たちの取り組みが、小さな政党と大差ない適度に抑えられてしまうからです。

ですが、どんな制約にも抜け道はあるものです。実は与党だけは、政権政党ならではの「秘策」を打ち出すことができます。

それは自民党総裁として情報発信するのではなく、日本国総理大臣として情報発信するということです。自民党の公約は、自民党総裁としてのメッセージです。ですので、大きく取り上げられることはありません。ですが、もし、公示日後に大きな政策や外交施策を打ち出したら、どうでしょうか。各報道機関は大々的に報道せざるを得ません。総理大臣として、国政の行方を確実に左右する決定を下したことになるからです。

国会が開いていないので、公示日後に重要政策を打ち出すことは難しい。ですが、世界情勢は日本の選挙など全く関係なしに動き続けています。なので、総理大臣として、外交での動きは選挙直前の格好のアピール材料になりえます。

私の取材経験からも、実際に調整ができず、対外的に打ちだせるまでに至らないことも多いのですが、自民党の情報発信の担当者は確実に、何か公示日後に外交課題か政策で打ちだせるネタを仕込もうと、虎視眈々と狙っています。

全く同一の人物であっても、立場を適切に使い分けることで、効果的な情報発信が可能になるという好例です。企業の経営者も、例えば、業界団体の役職者として、あるいは地域団体のメンバーとして情報発信すれば、大々的に取り上げられることがあるのです。

あなたは自分が持っているどの顔で情報発信するか、しっかりと見定めることができていますか?

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