今週の専門コラム 「最強の武器はストーリー」 第61話 資金調達に効くストーリーとは
先日、大変嬉しい声が届きました。
「シモヤさん、うちのサイトを見たベンチャーキャピタルから出資したいという連絡が来ました」
私が支援しているスタートアップ企業の経営者の方から、こんな連絡をいただきました。出資を申し出てきたというのは、日本有数のベンチャーキャピタルです。自社から売り込んだわけでもないのに、何の面識もないのに、連絡が来たとのこと。しかもまだサービス開始前であるにも関わらず、です。自社サイトに開始予定のサービス概要と起業ストーリーだけを掲載していただけでした。
「社長の想いに共感しました」
そう、メールには書いてあったとのこと。当たり前ですが、投資ですから「経営者の想いに共感した」というだけで出資を申し出るはずはありません。ですが、少ない判断材料のなかで、「想い」が寄与したことは間違いありません。
支援の結果、マスコミに出るのは当たり前の話です。今回のようにマスコミに出るという以上の成果が得られた。そんな声を聞けると、この仕事をしている冥利に尽きます。大げさではなく、我が事として喜びを実感できる瞬間です。
マスコミに何度も出るためにつくったストーリーなのですが、機関投資家にも好感を持たれるというのは、実はそれほど意外なことでもありません。
というのも、シモヤが構築するのはテレ東や日経といった経済報道で好んで取り上げられるストーリーです。経済報道では、政治報道や事件報道のように、記者が自己主張することはありません。視聴者や読者が知りたいことを伝えるという使命にかなり忠実です。
特に私がつくっていたテレビは分刻みで視聴率が出ます。何をどのように伝えることが視聴者のニーズに適っているのか。嫌という程、わかってしまいます。リモコンを握った視聴者は誰にも遠慮することなく、チャンネルを変えてしまいます。
では経済報道の視聴者や読者とは、どのような人びとなのでしょうか。いうまでもなく、ほとんどはビジネスの第一線で活躍している人々です。
日本最大の広告会社、電通は日本の主要なテレビ番組の視聴者調査をかなり念入りに行なっています。電通は日本最大の広告会社にして、テレビ広告の取り扱いでは他の追随を許さないほど圧倒的なシェアを握っています。まさにその名に相応しい調査内容です。
この調査内容は非公開なのですが、実はシモヤは見たことがあります。テレビ東京在籍時に、自分の担当番組について見ることができたのです。それによると「ワールドビジネスサテライト」の視聴者は、大手企業の経営層や管理職が中心でした。視聴者の年収も、日本の平均をはるかに超える額でした(具体的な額も知っていますが、当然ここには書けません(笑))。
つまり、経済報道番組は日本の主要企業のリーダー層が興味を抱く、共感する、励まされる内容を伝えているということです。ベンチャーキャピタルの方々もまた日本のビジネス界をリードする存在です。ですから、番組出演を狙って作成したストーリーに関心を抱く、あるいは支持するものであるのは、不思議でも何でもありません。
これがバラエティ番組、あるいはファッション誌などを意識した内容だと難しいということは、言うまでもないでしょう。単純にメディアとして抱えている顧客層が違うということなのです。
逆に専業主婦の方々、あるいは学生などに訴求したいのであれば、私の得意分野のメディアは全く適していません。目的によって、メディアを使い分ける必要があるということです。
ただ「マスコミに出る」を狙うのではなく、その先の効果まで見据えて、発信内容を構築する。ぜひ、意識してみてください。